ストロング・マン
前回同様、奈美の旦那さんが迎えに来るということでお開きになり、またも必然的に修也と一緒に帰ることになった。
「まさか奈美があんな風に考えてくれてるなんて思ってもみなかった。」
言えたことの達成感と2人に喜んでもらえたことが嬉しくて、私の身体も思考もふわふわしていた。
そんな私を見て修也がふっと微笑む。
「奈美も心配そうにしてるな、とは高校の時から感じてた。
でもまさか抱き着きにいくとはな。あの奈美が。」
「ほんとにそう。それくらい嬉しかったってことだよね。
・・・って、奈美もってことは修也も高校の時、心配してくれてたの?」
私の発言に修也が嫌なものを見るような顔をして、ぴたりと歩みを止めたため、私も慌てて立ち止まる。
眉間に皺が寄って、せっかくの端正なお顔が台無しだ。
「はあ。お前な、俺を何だと思ってたんだよ。」
大きくため息をつきながらじとっと私を睨み付けてくる。それが結構怖くて思わずうっという声が出た。
「い、いや、何か言いたそうな顔をしてるなとは思ってたけど。
どうせこいつなにやってんだ、とかばかじゃね、とかやれやれくらいだと思ってたから・・・」
追及が怖くて思わず最後の方が小さい声になってしまった。ちらっと見ればすごく不機嫌な顔をして修也が立っているではないか。恐れ多くて慌てて修也からふいと顔を背けた。
すると、コツ、という革靴の音とともに、「郁。」と私を呼ぶ声が頭上で聞こえた。私との距離を縮められて、すぐ近くまで修也がきていることが分かった。
何を言われるのかとぶるぶるしていると、
「俺が今までどんな気持ちでお前のこと見てきたと思う?」
すごく真剣な声が降りてきた。