粉雪
『あら~?どーゆー組み合わせかしら?
二人って、裏で繋がってるの~?』


「―――ッ!」


突然に、背中から聞こえてくる女の声。


瞬間、嘘であればと願った。


忘れもしないその声に、ゆっくりと振り返って。


まるで、あたしを包む空間だけが、時間が止まっているのかとさえ思えて。



「…安西…香澄…!」


目の前に居たのは、すっかり“夜の蝶”へと変貌した香澄だった。


嘲る様に笑うその顔に、全身から血の気が引き、心臓の音が早くなるのが分かる。


本当に、何もかもが別人にさえ見えて。


あの頃の面影は、もぉどこにもない。



「…何でアンタがココに…」


『…今日は、千里ちゃんに言いたいことがあって来たのよ。
いつになったら、賢治くんと別れてくれるの?
ずっと千里ちゃんのこと信じて待ってるんだけど~!』


小馬鹿にするように言う香澄に、虫唾が走る。


コイツの所為で、あたしの人生が狂ったんだ!



『アァ?!
てめぇ、誰に口聞いてんだよ?!』


割って入ったように、マツが香澄を睨み付けた。



『ハァ?それはあたしの台詞でしょ?!
アンタこそ、誰に口聞いてるかわかってんの?!』


そして香澄は、ハッと笑って言葉を続ける。


『立場わきまえなさいよ!
アンタなんか賢治くんの腰巾着じゃない!
あたしが言えば、アンタなんかすぐにお払い箱よ!』


『てめぇ、クソアマが調子乗ってんじゃねぇぞ!』


瞬間、掴みかかろうとするマツを制止した。



「マツ!やめて!
そんな女にイチイチ怒ってどーすんの?!」


そして香澄に向き直りあたしは、その瞳を睨み付ける。


「…アンタ、馬鹿じゃないの?
今、ハッキリわかったわ。
愛されてるのはアンタじゃないってね!」



“本田賢治”は隼人と違う。


“本田賢治”にしか愛されてないこの女は、あたしの下だ!



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