粉雪
「…何で隼人が狙われないといけないの?」


『…シマ荒らされて、黙ってるわけにもいかねぇだろ?
それに、アイツはうちの組の情報も持ってた。
どこまで知ってるかは知らねぇが、ポリに喋られると困るんだよ。』


そう言うと河本は、運転手に行き先を告げた。


隼人が言ってた“情報”って、そのことなんだろうか?



「…アンタの何を信じろって言うの?
アンタ、綺麗な指してるじゃない!」


河本の10本全てある指を見て、嫌味ったらしく吐き捨てた。


だけど河本は、ハッと笑う。



『…お穣ちゃん、極道映画観すぎなんじゃねぇか?
最近のヤクザは、指なんか落としたりしねぇよ。
そんなモン、一円の銭にもならん。』


“この世界は、銭で決まるんだ”


そう言う河本に、あたしは唇を噛み締める。



『…俺は近々、親父に戦争吹っ掛ける。
死人も出るかもしれねぇなぁ。』


「―――ッ!」


瞬間、あたしは目を見開いた。



「…あたしに話して、どーなるか分かってんの?」


『…お穣ちゃんのアンタに、何が出来る?』


「―――ッ!」


河本の言葉に、唇を噛み締めることしか出来なかった。



『…あの男も、とんだマヌケだよ。
嘘の情報に踊らされて、俺を狙いやがった。
飼い犬に手ぇ噛まれて、アイツを殺そうとしてた矢先にコレだよ。』


「―――ッ!」



“嘘の情報”って…



「…じゃあ、安西香澄も隼人を騙してたの?!」


途端に、心臓が早くなる。




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