粉雪
『…あの女も、所詮踊らされてただけさ。
小林のヤローの為に必死で体使って手に入れた情報も、全部親父が仕組んで流したものだった。
俺とアイツを、殺し合いにでさせようとしたんじゃねぇのか?』


ハッと笑い河本は、煙草を灰皿に押し当てた。


ただ、言われていることが理解出来なかった。


今まであたし達は、どれほどあの地獄に耐えてきただろう。


なのにそれが全て、仕組まれてたことだったなんて…。


今まで、何のために…



「…そんな…」



じゃあ一体、あたしは誰を恨めば良いの…?


目の前に居る男は、あたしの憎むべき相手ではなかった。


今更知らされても、全てが遅すぎる…!



『…お前、俺と来るか?
行くとこねぇんだろ?』


ゆっくりと河本は、あたしに言葉を投げる。


『…アンタは見たトコ、最高の女だ。
“小林の女”なんか小さいだろ?』


「…誰がアンタみたいな…!
あたしは背中にラクガキ描いて喜んでるヤツの女なんか、まっぴらだよ!」


河本を睨み付けた。


たとえそれで香西組長を殺すことが出来たとしても、

きっとこの男からは一生逃げられないだろうから。


こんなヤツ、絶対に信用出来ない。


あたしのことだって、飼い殺しにして終わるだろう。



『ハッ!流石だなぁ。
お穣ちゃんを育てたアイツは、俺が見込んだだけのことはある。』


「―――ッ!」


気を抜くと、涙が溢れそうであたしは、唇を噛み締めた。



『…あの男、そんなに良かったのか?』


「ハッ!アンタみたいに脂ぎってないしね。」


嫌味のつもりで言った。



『んだと、クソアマが!』


瞬間、助手席に座っていた男が、振り返ってあたしを睨みつけた。



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