粉雪
『…部屋…最悪だな…。』


傷の手当をしながら、マツはポツリと呟いた。



『…悪かったと思ってる。
俺は、葬式にも出られなかった…。』


「―――ッ!」


涙が頬を伝い、首を振ることしか出来ない。



『…全部、処分しといたから…。
あとは、この部屋だけだ…。』


「…そう…。
ありがとね…。」



本当は、マツだってお別れを言いたかった筈なのに、

あたし達の為に全てを片付けてくれていた。


アパートも、トランクルームも、車も…。



『…あの写真…最高の笑顔だな…。
やっぱ、アンタは愛されてるんだよ…。』


「―――ッ!」


遺影を見たマツは、少しだけ笑っていた。


その言葉にまた涙が溢れ、楽しかった日々を思い起こさせる。




『…手紙…渡そうと思って…。
隼人さんから預かってたんだ。
アンタがもし、隼人さんと一緒に生きる道を選らばなかった時に、渡す筈だったものだ。』


「―――ッ!」


そう言って渡されたのは、紙袋。


見るとそこには、一通の封筒と、ジュエリーボックスが入っていた。


ゆっくりとあたしは、その箱を取り出す。



「…これは…!」


入っていたのは、ペアのリング。


シンプルなだけのそれが二つ、真っ黒な箱の中で輝きを放っていて。


言葉を失った。



そしてゆっくりと、あたしは手紙を開く―――…





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