粉雪
『待て、千里!
お前の所為じゃない!
別れられなかったのは、あの人の方だ…!』


「…違うよ、マツ…。
本当は、出て行こうと思えば出て行けたんだ。
でも、それをしなかったのはあたしだから…。
隼人が死んだのは、結局あたしが傍に居たからなんだ…。」


唇を噛み締めたのに、自然と涙が頬を伝って。


誰もあたしを、責めてはくれなくて。


だから余計に、罪悪感にばかり支配される。


あれからずっと、苦しいばかりの毎日だよ…。



『…本当は、俺がお前のために意地でも止めてやるべきだったんだよ。
でも、今耐えればお前ら二人が幸せになれると思ったから。
全部片付いたら、二人で幸せになって欲しかった。』


そしてマツは、唇を噛み締めて。


『…俺じゃお前を、幸せにすることなんて出来ないってわかってたから…。』


「―――ッ!」


ただ泣きながらあたしは、首を横に振った。


本当にただ、息苦しくて堪らなかったんだ。


隼人の居ないこの現実も、マツの気持ちも何もかも。



『…隼人さんもな、多分、引き返せないトコまで来てたんだよ。
お前を守るためには、情報掴んで警察に流すしかなかった。
でも、それはお前の所為じゃない。
隼人さんが、お前と生きたいと思ったからなんだよ。』


「―――ッ!」


『…あの人な?
最後まで、“自信ない”って言ってた。
“あれだけのことしたのに、それでも俺の傍に居るのは、他に良くトコがないからなんだ”って。
手紙残したのだって、ほとんど諦めてたからなんだよ。』


そう言うとマツは、思い出したように唇を噛み締めて。


あたし達はただお互いに、愛し合ってただけだったのに。


何が悪かったのかな。


出会わなければきっと、こんなことにはならなかったんだ。


だけどそんな世界、あたしはいらないから。




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