粉雪
隼人の家から帰ると、我慢していたものを吐き出すように、声を上げて泣いた。


隼人の考えていることがわからない。


服についたセブンスターの臭いと、隼人のスカルプチャーの香水の香りが、

嫌でも先ほどのことを思い起こさせる。


隼人はいつも笑ってて、だけどどこか悲しげで。


優しいばっかなのに、何も教えてくれなくて。




あれから2時間。



♪~♪~♪

着信:隼人



「―――ッ!」


微かな期待と、大きな不安に揺らぎながら、ゆっくりと通話ボタンを押した。



―ピッ…

怖くて怖くて、何も言えなかった。


支配する沈黙が、重くて苦しい。



『…ちーちゃん、帰ったんだ…。』


「…うん。」



電話口の隼人の声に、胸が締め付けられて。


それ以上、何も言えなかった。



『…やっぱ、俺の所為、だよな…?』


「…違うから…。
あたし自身の問題だよ…。」



キスをした隼人を責めるつもりなんてないんだよ。


ただ、これ以上隼人と顔を合わせられなかった。


どんな顔すれば良いかなんて、わかんなかったんだ。




『それは―――』


「隼人と居たら、聞きたいことばっかり出て来るんだよ…!
“何も聞かないし、何も言わない”なんてこと、出来るはずがないよ…!」


『―――ッ!』


涙を抑えようとすると、隼人を責めてしまいそうになる。


泣きたくなくて唇を噛み締めたのに。



『…ちーちゃん、俺のこと好き…?』


「―――ッ!」


戸惑いがちに聞いてくる隼人に、切なく胸が締め付けられた。



「…好きだよ…!」



それは、どうしようもない気持ちをぶつけた瞬間だった。


吐き出すように搾り出して。


もぉ、涙は止められなかった。



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