粉雪
―――次の日のバイト終わり、隼人が迎えに来てくれて、二人で買い物に出かけた。


隼人があたしの物を揃えてくれて、部屋は少しずつ、あたし色に染まって行った。


出会った頃は何もなかったのに、

今ではスヌーピーのぬいぐるみが、ペットの代わりだ。


そんな些細なことに、どうしようもなく幸せを感じた。


隼人の携帯が鳴る度に、不安にならないと言ったら嘘になる。


だけど、隼人はあたしの前で、何一つ変わらなかったから。


イッパイ愛してくれたから。


それだけで良かったんだ。




そして大晦日。


新年を迎える前に眠ってしまったあたしを、隼人は笑ってくれた。


結局、年越し蕎麦は朝ご飯になってしまったけど、

それでも隼人は“幸せだよ”って言ってくれた。


あたしは初めて、人から必要とされた。


だからあたしは、隼人が愛してくれる以上に、隼人を愛した。


傍に居るだけで、抱き合ってるだけで良かったんだ。


あの頃から、あたしはそれ以上は望んでなかった。



隼人の為にご飯を作って、一緒に白のソファーで笑いあって。


たまにケーキなんか食べながら、チャンネルの奪い合いして。


独りじゃなかった。


なのにあたしは、いつからあの広いマンションで独りきりになったんだろう。


守って欲しかったんじゃないよ?


ただ、何もかも話して欲しかった。


そしたらあたしは、隼人の為に離れることが出来たのに…。


後悔したって遅いね。


ごめんね…?


もぉ、あの部屋はないんだ―――…



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