グレフルフレーバー
幕を上げろ!
 その日は、一般的に言えば、ちょっとは特別な日にあたるのだろうか。相原和也は今日から高校一年生だ。だが、和也は特に気負いや緊張感も無く、至って普通の朝を迎えていた。

 新しい制服に腕を通せば、それなりの実感は湧くものの、食卓に並んだいつもと変わらない朝食を見ると、それはすぐに引っ込んだ。

「和也、アンタ、今日から高校生なんだから、朝は自分で起きるようにしなさいよ?今朝だってお母さんが起こさなかったらいつまで寝てたか…」

母親の小言も聞いているのか、いないのか、和也は黙って味噌汁の椀を口に運ぶ。『高校生なんだから』と言われても、和也は実際つい先日まで中学生だったのだ。しかも高校生活は始まってもいない入学式当日の朝。自覚を持てと言うのが無理だろ、と和也は思った。
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