青碧の魔術師(黄昏の神々)

黄金を纏いし少女

「シュリ。3ブロック先で走る靴音。息遣い荒くて、その後に続いて3、4人の靴音……。どうやら、女の人が複数の男に追われてるみたい 」

「あぁ。そうみたいだな」


シュリが空中を見つめ、呟く。


「んじゃあ、どうするの?」

「面倒事は、御免だ」


ロイの問い掛けにシュリは踵を返すと、その場を立ち去ろうとする。

が、ロイの声に彼は立ち止まる事を余儀なくされた。


「あっ!! でももう遅いみたいだよ」


と、言うロイの呼び掛け。

それと同時に、何かがロイの横を駆け抜ける。

その瞬間、赤い靴の鮮やかな朱色が、ロイの目に飛び込んで来た。

それは、シュリを見付けると、両腕を伸ばし倒れ込む様に、彼に抱き付いた。


「お願いです! 助けて下さい!!」


シュリは、飛び付かれた勢いでよろめきはしたが、すぐに体制を整えた。

自身の腹部に巻き付く、きゃしゃな腕に、背中に感じる軟らかさと、体温。

ゆっくりと首を巡らし、自分にしっかり抱き付く者を見る。

黄金に輝く絹糸の様な髪が、シュリの目に飛び込んで来た。

黄金の髪が揺れて、誰か解らない少女の頭が動く。

柔らかい印象を受ける、花の様な顔(かんばせ)。

シュリは、少女を見て息を飲んだ。

走り寄って来たロイも、シュリ同様、言葉を失った。


『セレナ……』


「セレナだっ!!」

「違う。彼女じゃ無い」


ロイの嬉しくて弾ける様な声に、間髪入れずにシュリが答える。

少女は蒼色の瞳で、不思議そうにシュリとロイを見比べた。

そして。


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