青碧の魔術師(黄昏の神々)
『あたしがおばあちゃんになっても、変わらず愛してくれるって分かっているもの。だから平気よ』


そしてイシスは、シュリにこう言ったのだ。


「私がおばあさんになっても、シュリさまなら変わらず愛して下さると、分かっています。ですから全然平気です」


言葉使いは違えども言う事の意味は同じ。

セレナがかつてシュリに言った言葉の意味そのままに、イシスはシュリに告白した。


『馬鹿が……。言うなと言ったのに。昔の様に彼女を手に入れて、俺のものにして、彼女が幸せになると思うのか!? 決して繰り返さないと決めた……。なのに俺は……』


シュリは自分の葛藤を、イシスに悟られない様努めながら、彼女に問う。


「イシス、お前はこんな俺を好きだと言うのか? 会ってまもないと言うのに? 何故、自分の一生をかけれると、言えるんだ?」

「言えますよ。だって一目惚れは有りますから。私はシュリさまに一目惚れしました。それに……」


イシスがずっと掴んでいた指を離し、シュリに抱き付いた。

彼の腰に腕を回す。


「私にとって、シュリさまに会うのは、今回が初めてではありません」

「俺に覚えはない」

「うふふっ……。でしょうね」


イシスがシュリを見上げて悪戯っ子の様に笑う。


「私はシュリさまに何度もお会いしていますが、シュリさまは私に会っておりませんもの。致し方ありませんわ」


イシスの腕がシュリからするりと外れて二、三歩後ろへ下がる。

一瞬のうちに風が二人の間を吹き抜け、周囲の花々の花弁を引きちぎり、散った花びら共々、巻き上げる。

その中心にイシスを包み込んで。


「あっ……」


風に掠われるかと勘違いする程に、風は彼女をもてあそぶ。


「イシス!」


手首を強く掴まれた。

力強い腕に引かれて、気が付けばイシスは、覆いかぶされるかの様に、抱きすくめられていた。


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