先生
第三章

祈り

冬休みはあっという間に過ぎていく。
お父さんの実家で、おじいちゃんたちと同居している彩花の家には、気が付いたら、いとこやおじさん達が集まっていた。
お父さんの方の親戚の人達があまり好きじゃない彩花には、この時期は退屈そのもの。
でも、お年玉は欲しいから、いつも愛想よく接する。
「彩花ちゃん彼氏おらんのー??」
ひとつ年下の沙知絵が聞いてきた。
彩花はこの子が一番嫌い。
「おらんよー」
“いる”と見栄を張ろうか迷った。
でも、先生の顔がフッと浮かんで止めた。

彼氏はたしかに欲しい。
でも、どうしても先生が好きだから。
先生以外あり得ないから。
今ここで見栄を張って“いる”って答えたら、なんか先生への片想いを否定しているような気がしてやめた。

「へ〜。」
彩花はそれ以上沙知絵と話したくなくて、あからさまにうざいって顔をする。
それに気付いてか気付かずか、沙知絵は彩花から去っていった。


ため息をついて、窓の外を見た。
少しだけ積もっていた雪が解け初めて、ところどころに水溜まりをつくっている。
今日は今年最後の日。
家の手伝いに追われながらも、やっぱり頭に浮かんでくるのは先生。
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