ホワイトデーの復讐
あたしは高1で、彼はあたしの一個下で…ここはあたしの学校。で、今はちょうど昼休み。
何が言いたいかって、彼がここにいるのは変な話ってこと。
「紗也に会いに来た」
『は!?』
「ってのは冗談で」
し、心臓に悪い冗談を言うなっ!
「教科書販売の日なんだよ。俺、推薦だから一般より先に買いに来たの」
『へぇ…』
この春から後輩になっちゃう彼。聞いたときはホントびっくりした……。
「で、ついでに伝言」
『伝言?』
「来週の土曜日。10時出発だって。おばさんに伝えといてよ」
来週の……あぁ。ママと彰のママさん、一緒に温泉旅行行くんだっけ?
ってか彰ママ、温泉旅行好きだね…バレンタインデーも温泉旅行に……
“バレンタインデー”
いろいろ思い出してしまったあたしは、思わず赤面。
“好きなんだよ、ずっと前から”
彰があたしにそう言ったのも、バレンタインデーだった。
ずっと弟的存在だった彼に、いきなりそう言われ、困惑したあたし。
結局、返事はまだしてないんだけど……自分の気持ちがよくわからないってのが本音。
彰のことは好き。
でもその【好き】は、幼なじみとしての【好き】か、男としての【好き】か……どの【好き】なのかがわからなくて…
返事しなきゃとは思ってるんだけど、彰は彰で、今までとなんら変わりなく接してくれてる。いや、変わったと言えば……
「今日家来てくれる?話、あんだけど」
前より仲良く、というか、よく関わるようになった。
彰が中学生になって、前と比べてちょっと疎遠になったかな、と思ってたけど。
『わかった。帰り寄るよ』
「頼む。じゃあな」
あたしの頭をポンッと撫でると、彼は教室を出ていった。