最後の春
「は!?」

裕は階段の途中で立ち止まり光司の顔を見る。光司はビールのせいか機嫌が良い顔のままだ。

「パパ!夢ヶ咲で長野さんと会うの?」

優美も光司の肩をつかむ。2人のリアクションに光司は驚きながら

「長野さんがどうかしたのか?」
「だから~なんでパパの出張に長野さんが出てくるの?」

状況を把握できてない光司に流石の優美も少しイラつく

「出張先の取引会社の担当が長野さんらしいんだ。今日久しぶりに連絡が来てパパも驚いたよ。」

肩を揺らされながら光司は変わらずビールを飲み続ける。仕事帰りの一杯を何より楽しみとしている光司は普段以上に詰め寄ってくる2人に少し嬉しそうな顔をした。

「出張期間はGWだけ?」

裕は冷静さを取り戻すことに必死で優美が詰め寄ってる光景を眺める事しか出来ない。

「多分、そうなると思う。だからすまんがGWは我が家の旅行は無しということだ」

裕は無言で部屋に戻った。中学の同級生だった宮田さんの登場。GWに夢ヶ咲に出張する光司が長野のお父さんと会う。裕は自分の中で整理しながら布団にもぐった。あした学校で長原たちに話してみよう何か出来るかもしれない今はその決断をすることで一杯だった。

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