優しい気持ち
それから一ヶ月程経ったある夏の日、私がいつものようにバス停で待っていると、彼が現れた。

「あっ、今帰りですか?」

「そうだけど。毎日勉強でイヤになるよ。」

「そうですよね。」

「横、いいかな。」

そう言って、彼は私の隣に腰を下ろした。
夕日がまだ出ている夏の夕方。

私は教科書やお弁当箱が入ったカバンと部活用のカバンの二つ。彼はカバンと右手には小説を持っている。いつも小説を携帯している彼。内容はよく知らない。

「明日も勉強ですか?」

「そうだね、受験生に休みはないからね。」

「でも、休みの日くらいゆっくりした方がいいですよ。」

「そうかもね。君は明日も部活なの?」

「いえ、明日休みです。この前やっと大会終わったんで、今週末は休みです。」

「いいね。何するの?」

「特に予定はないんですけど。あっ、明日花火大会だから家族みんなでいくかも。」

「そう。」

明日は久しぶりの休み。そして、盛岡一の花火大会がある日だ。毎年家族と行く花火大会。今年も急に父が言いだすに決まってる。

「花火大会かぁ。いいね。」

「いかないんですか?」

「そうねぇ・・・。」

「気が紛れると思いますよ。」

「じゃあ、よかったら一緒に行かない?」

「・・・。えっ?」

突然男の人に誘われた花火大会。しかもその人は私の好きな人。一緒に話ができるだけで満足していたのに、急なアプローチ。私は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

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