優しい気持ち
第一章 違和感
私は407号室の部屋の前でひとつ深呼吸をし、二回トントンとノックをした。

《ドタン・・・ガタっ!!》

ドアの向こう側から何やら慌ただしい物音が聞こえる。

《何だろう。》

私は周囲を気にしながら、その部屋が開くのを待った。

《まだかな・・・。》

このドアが開くまでの時間は、なかなか慣れない。この時も緊張しているのが自分でもわかった。客はドアのサイトから私の顔や姿を確認できるだろう。でも、こちら側からはそれはできない。客によってはドアを開くことなく、『チェンジ』を要求することもある。

《まだ・・・?》

しばらくしても開かないそのドア。
今、私は見られているのだろうか?

《チェンジ・・・?》

そんな劣等的な気持ちで待っていると、鍵を開ける音が。その直後、勢いよくドアが開いた。

「・・・。」

私は一瞬びっくりした。
何というか、想像押していたよりもだいぶ若く、大きな瞳がきれいだった。そして、その瞳からは不思議な印象を受けた。
その人は浴衣を羽織っており、またそれがいいカンジに着こなせていた。

「あのっ・・・こんばんは。」

何かよくわからないけど、うまく言葉が出てこなかった。407号室の前で固まっている私を見て、その人が手を引いてくれた。

「ほら、早く入って!」

「はいっ・・・。」

その人は私のすきなあの人に似ていた。
ぼーっとして一瞬仕事を忘れかけた。

部屋に入って周りを見渡すと、普通のビジネスホテルの一室で、奥にはベッド、その脇にはテレビと机があった。一つ異なる点があるとすれば、何故かバスケットボールが床に転がっていたことだ。

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