優しい気持ち
六分ぐらいだろうか、その人が帰ってきた。私が407号室にいるのが当たり前のように
、何の疑いもなく。

普通ならケータイやら財布やら何もかも残したまま、初対面のしかもデリヘル嬢を残して部屋をでるのは、いささか無神経だ。

部屋の鍵も置いていってるし・・・。

《ドンドン!ガチャガチャ・・・》

「あっ・・・!」

「早く開けて!」

ドアの向こうから声が聞こえる。
ほらね。鍵を部屋に置いていくからだ。

「・・・。」

「やっと部屋にはいれた・・・。」

「なんでか・・・!」

少しだけ背の高いその人を見上げるようにして、部屋の入口のところで尋ねようとしたが、その人は私の髪をくしゃくしゃっと撫で、にっこりほほ笑んだ。

「ほら、残りの千五百円。」

「・・・。」

今まで男を信じるということをしなかった私にとって、その人は異質の男性だった。ただその違和感はどこか心地よいものだった。
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