天使への判決
「まあな…本当は海外にでも逃亡したいところなんだが、行き場所がない訳だ…」
そう言いながら笑い放つケンジを見ながら、私の中でひとつの妄想が膨らむ。
ケンジは人を殺したのかもしれない。
それもヤクザの総長か何か…
その子分に追われる身になってしまった。
だから何処かに身を潜めなければ自分の命が危ない…
まさかとは思いつつもケンジの瞳から目を逸らせずにいると、
「お前、何か変なこと考えてないか?」
そう言って、私の髪をくしゃくしゃと撫でながら額に軽いキスをした。
「俺は追われるような事はしてねえよ
ちょっと事情があって、アパートへ今は帰れねえだけだ」
私の不安を余所に
「行くぞ」
そう言ったかと思うと、素早く私を助手席に私を座らせてトラックは走り出した。