天使への判決
ギアの切り替えに慣れていないのか、車は前後に大きく揺れながら大通りへ抜ける。
「隣街でいいのか?」
チラリと私の方を見たケンジに私は頷くだけの返事をした。
夕暮れの太陽がビルの隙間から差込み、少しだけ渋滞した車の列の影を落とす。
「リサ、ここ数日間お前の事ばかり考えていたんだ…
何をすればお前の声が聞けるのか、お前に会えるのか…」
夕焼けのせいか、ケンジの横顔が寂しそうに見えた。
後ろが気になり小窓から荷台を見下ろすと、トラックの揺れに合わせて向日葵たちが
小刻みに上下運動を繰り返す。
向日葵たちはまるで私の部屋に行く事を喜んでいるように見えた。
ここから私のアパートまでは車で移動するとわずか20分程で着く。
ケンジの言葉を疑っている訳ではないが、変な問題に巻込まれてしまう前に、ケンジを引き離すなら今の内だ。
ねえ、私はあなた達と一緒にこの男を部屋に招き入れていいの?
彼は本当に何にもしてないの?
近い将来、自分の運命を変えてしまうかもしれないこの男の正体を、私はまだ何も知らずにいた。