そして海の思い出を胸に

ハァ、と大きなため息と共に聞こえた。



「素直じゃないなぁ」

その声の主──涼さん──はそう言って、半ば強引に横取りして、鍵を掛けてくれる。



「一応、お礼を言います。ありがとうございました。でも、もう私の前に姿を見せないで下さい」



視線を合わせずそう言ってカバンを持ち、行こうとする私の前に、邪魔するように涼さんは立った。



「通して下さい」

私のセリフに、涼さんは軽く笑った。

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