幽閉されし鏡
暗黒系

『僕の蟲心(ちゅうしん)』


心の中で黒く蠢くそれは何なのだろうか


それはいつの間にかあった
僕の中心に


見て見ぬふりをすればするほどますます膨れ上がって僕は黒く染まっていく


親に言った 友に言った 君に言った 僕に言った


別に何でもない 大丈夫平気 頑張ってるよ そうだよな


また心の中で黒く蠢くそれは僕を包み込むように拡がっていく


なんなんだよ どっか行けよ 目障りなんだよ 消えろ


心の中で黒く蠢くそれは笑った 口が見えるわけでも 声が聞こえるわけでもないけど そう思った


そんなに邪魔なら殺せよ
殺しちゃえよ 楽になれるぞ ほらはやく殺せよ


それは言った
だから僕はいつの間にか右手にあったナイフで切り裂いた 楽になるために 切り裂いた


      倒れた


そして わかった
それが何なのか


嘘ばかり言った 嫌気がさした もう嫌だったんだ 意味がないと思った 目障りだった 消したかったんじゃない
    消えたかった


目の前に それはいなくなった ただ赤く染まる絨毯があるだけだった




心の中で黒く蠢く

僕の蟲心で黒く蠢くそれは

    僕自身だった

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