君がいた…
「お前…いったい どうしたんだ?」

体育館の隣の部屋―
指導室に入るとすぐに

男性―合田(ゴウダ)は、宏史の両肩をつかんで言った。

宏史は

ゆっくりと下から目だけを動かし合田を見た。

「なんという目をしてるんだ…お前は…」

宏史の目を見た合田は、言葉を詰まらせた。

「どこまで自分を責める気だ?あれは、事故なんだぞ?」

宏史の肩を揺さぶりながら

合田は必死に語りかけるが…

「俺が殺したんだよ」

か細く震える声で、合田を睨みながら宏史が答えた。

「沢渡!それは違う…」

合田がそう言いかけたとき…

“コンコン”

「合田先生?式が始まりますが…」

…と ドアの外から若い女性の声が聞こえた。

「すぐ行きます。」

合田は、ドアの方に向かってそう答えると

また 宏史を見た。

「行くか?」

合田の問いに宏史は、軽く首を横に振った。

「そうか…」

それを見た合田は

寂しそうな笑みを浮かべ指導室を出て行った。

残された宏史は

力が抜けたようにズルズルと座り込んだ。
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