マリオネット・ワールド <短>



「アンタはさ、なんで生きてんの?」



男からの、何の脈略もない唐突な質問。


それこそ無意味だと思える会話だが、二人の間に限っては

互いの名前を知るよりも、重要な役割を担っていた。



「死ぬ理由がないからかな。そういうアナタは?」


「心臓が動いてるから」


「そっか……」



チグハグなままで途切れる、二人の会話。

間違っていないはずなのに、まるで所々がほつれているかのような言葉だった。



そして、普通だとは言い難いやり取りはまだ続いていく。



「私、今アナタと仲良くなろうと頑張ってるんだけど」


「違うだろ?俺の中身を覗きたいだけだろ?」



鳴海悠はひと息つき、そこで諦める。

佐伯歩という人物と、同等の位置で並ぶことを。



「お見通しね。でも、世の中は一期一会なんだから、もっと大切にしなきゃ」


「一期一会?確かにそうだな。だけどそれがどうして、大切にしなきゃいけないってことに繋がるんだ」


「だから、一期一会だからよ」


「意味がわからない。一度きりだとして、取るに足りない奴なんてこの世に5万といるだろ」


「……確かにね」


「だからその方程式は不正解」


< 18 / 44 >

この作品をシェア

pagetop