マリオネット・ワールド <短>
実証



「ね、さっき言ってた条件にピッタリの人、私知ってるんだけど――」



鳴海悠は、今関係を持っている男のアパートの隣人を思い浮かべた。



――有沢知美。


ボサボサの髪に、手入れされていない顔。

その見た目は、何が楽しくて生きているのかわからないような女だった。



ドアが閉まる音以外、気味が悪いくらい、隣の部屋からは物音ひとつ聞こえてこない。


まるで、人が住んでいる気配がないのだ。


日常を生きる中で、当たり前にある生活音が、有沢知美にはなかった。

それこそ、まるで幽霊であるかのように……



そんなだから、鳴海悠の知る限り有沢知美には、とりあえず友達はいないはずだった。


アパートの下で開かれていた、噂好きのオバサン達の井戸端会議で、

女が施設育ちで、身寄りのないことも知っていた。



この上なく、素材は完璧だった。


あとは、佐伯歩次第――



今まで、自分以外に“生”を有するものの中で、信じられるものなど何もないと思っていた女。



そうであったはずなのに……


最重要な場所を人まかせにするにも関わらず、

これからの未来に、鳴海悠は一抹の不安も抱いていなかった。



胸に溢れるのは、希望。

ただ、それのみ。


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