切なさに似て…

*****

小洒落た洋食屋さんで食事を終えるとチーフは、私が借りたばかりの独り暮らしするアパートまで送ってくれた。


『ごちそうさまでした。すっごく美味しかったです。ありがとうございました』

ありきたりなお礼を述べ、一礼した私。


『…食事だけなの?』

上目使いで問い掛けたチーフの、細くした目に絡まる視線。


『え?』

なんて聞き返したのは、多分、わざとだった。


『俺が柚ちゃんを好きだって言っても、このまま帰す気?お礼は言葉よりも…』

動いた唇に目を奪われた瞬間、肩を抱かれ触れた唇。


咄嗟のことに大きく開いた目を、ゆっくりと閉じた。



この先もずっと。

私の知らない誰かが信浩の隣にいるのかと、考えるとやる瀬なくて。


誰でもいいから身を委ねたかったんだ。

忘れさせてくれる人なら、誰だって良かった。


信浩の代わりが。

下の名前が[伸宏]って

ノブヒロと読みが同じの、チーフだなんてバカみたいだけど。
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