切なさに似て…
スプーンを口へと運ぶ信浩は一旦その手を止め、まだ文句を続ける。

「…カレーって手抜きだろ?」

「どこが?」

「カレーってだけで手抜き感満載」

「じゃあ、食べなくていいよ?」

「いや、食うけど?」

「じゃあ、黙って食べて!カレーライスだって立派な料理です!」


信浩はカレーにケチをつけているんじゃなくて、おつまみになりそうなものが1つもないことに不服らしい。

最初からそう言えばいいのに、押し付けているみたいだから言いたくないのだ。手に取るようにわかるから、笑ってしまいそうになる。

いや、多分。私の顔はニマニマしてる、はず。


人には遠慮するなとか言って、どっちが遠慮してるのよ。


冷蔵庫にあるもので、おつまみを適当に作って出すと、箸を突きながらビールを喉に流し込み、大人しくなった。

その隙に、私はシャワーを浴びる。


500円じゃ、光熱費にも満たない気がするんだけど、きっと信浩は受け取らないんだろうなって思う。


私は、これからどうしたらいいのだろう。
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