切なさに似て…
ドアがガチャリと開いて、信浩は眉を歪めて「ただいま」と言った。

「おかえりー」

「…何か、変な気分だな、柚果が部屋にいるって。俺より先に帰ってるって、なんかイマイチだなー…」

って、首を捻りネクタイを緩める。上着を脱ぎ捨て浴室へと消えた。


溜め息を吐いて、信浩が脱ぎ捨てたジャケットをハンガーにかけた。


そんなの、私も同じなんだけど…?

改めて声に出して言わなくても、よくない?

鍵を渡すってのは、そういうことなんだけど?


ねぇ…?本当に、わかってんの?

禁じた想いが言葉に出てしまいそうで、怖い。


私の胸の内を見事にキャッチしたわけではないだろうが、シャワーから出てタオルを頭にかけた信浩は。

「カレーライスってのは、手抜き料理の定番じゃねーかよ」

と、文句を言ってくれた。


「は?作ってもらった立場で文句言わないでよ」

「いや、言うだろ」

「言わないでしょ?」

「だって、カレーライスだぞ?」

「は?だから何よ?」


お皿を出し、盛り付けている間。ぶつくさと信浩はカシオレを作る。


一連の流れ作業をこなす私たちは、やっぱり奇妙な関係だなと思いながら、テーブルにお皿を並べる。
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