切なさに似て…
鞄に眠る携帯電話を探し当て、手帳に記されている数字を打った。


…多分、治なら信浩の居場所を知っているはず。

今でも親交があるのかはさておき、知らないわけがない。


数回のコールのあと、相手はさほど驚くことなく声を出した。

[もし?柚だろ?]

電話の相手は、高校の時に特に仲良かった治政こと、治。


今でもきっと連絡くらいは取り合っているはずだと。

電気を消した後、信浩はよく治たちの話を聞かせてくれたから。

そう思い立ち、電話をかけた。治はすぐに、受話口の向こうにいる相手が私だと気づいたようだ。


「番号教えてないのに、よくわかったね?」

何年か振りに聞いた懐かしい声に、学校の制服を纏っていた頃にタイムスリップしそうになる。


[そろそろ連絡来るかと思ってた。つか、番号は知ってるし]

教えてもいない私の携帯番号を何故知っていたかなんて、重要視せずに私は声を発した。


「…ってことは、何で私が治に電話したか…。わかってんだ?」
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