切なさに似て…
[まぁな。つか、柚は何処にいんの?]

「もう少しで駅に着くけど」

ぼんやり見え始めた地下鉄の白く光る看板を目に映し、その駅名を名乗る。


[んじゃ…。今、同窓会の最中だから来いよ。場所は…]

治は会場である、街中の居酒屋の名前を告げた。


まだ激しさが残る車が通り過ぎる音と、加えて受話口から耳に届くガヤガヤと騒々しい無数の笑い声。


…同窓会…?

そういえば、信浩は断ったって…。欠席にしといた言ってたっけ。


『今月終わりにやるんだと』

…って言ってた気がするけど、今日だったのか。


「いや、行かない」

[いいから来いって。信浩の居所教えてやっから。絶対来いよ!来なかったら一生教えないぞ!とにかく来い。10時までここにいるからよ]


念を押され、それは半ば強制らしく。とにかく来いと、言い張り話しが終わっていないというのに。


「ちょっ!治!?ちょ…」

ツーツーと終話音が耳の中に響き渡る。
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