切なさに似て…
レナを玄関へと押し込み、ブーツを脱ぎ捨てる。手探りで施錠をして真っ暗な部屋の中央へと来た時、下がった紐を掴む。

瞬時に明るくなった部屋は殺風景で、外気に負けないくらいに冷えていた。


ファンヒーターの電源ボタンに手をかけ、振り返ると未だに玄関に立ち尽くしていたレナが映された。


「入れば?それともそこで寝るの?」

私は俯くだけのレナに冷たく投げかけ、隅っこに追いやられた敷布団を床に敷き詰める。


「そんなに嫌なら家に帰るしかないんじゃない?」

私は財布の小銭入れから100円玉5枚を取り出し、貯金箱へと落としながら、いつまでも靴を脱ごうとしないレナに痺れを切らす。


「…何で、邪魔したの…」

レナが振り絞り発した声は小さく、その台詞に暗がりの玄関へと顔を向けた。


「…助けた覚えはあっても、邪魔した覚えはないけど」

とは言っても、私は助けた覚えもない。

正義感を発揮したのは私じゃない。治と麻矢だ。


「それより、…高校に通えないって、帰る場所がないって。何なのよ?」

それほど気にも留めないといった口調でそう言うと、剥ぎ取ったジャケットをハンガーへとかけ、シャワーの用意に取り掛かる。

今日は目まぐるしく色々なことに遭遇し、みんなに会ったりと、とっくに疲れ果てていた体をさっさと洗い流したい。


右頬はまだ紅く、涙目でキュッと唇を結び黙りこくるレナを見ていれば、“あの人”絡みなのは聞かなくともわかる。

口を開こうとしないレナを辛抱強く待つ気は到底なく、私は浴室へと姿を消した。
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