切なさに似て…
ドアが閉まる直前、視界に入り込んだ暗がりの廊下の先には、散らばったお金を拾い集める2人の滑稽な姿。

所詮、あの人達にとって子供より金にしか執着心が無かっただけ。金に対しての貪欲は計り知れない2人のことだ。

今頃、たった20万円でも満足しているはず。


せめてもの救いは、あの女と戸籍は違うってことくらいだ。

私もレナも父親姓をそのままにしてくれていた、あの女に感謝くらいはしておこう。


故意にカンカンと足音を鳴らし、階段を駆け降りてやった。

スカッと晴れた心に、昨日の芝居を演じた治と麻矢の気持ちが少しわかった気がした。

人助けしたつもりは更々ないけど、案外楽しいかも知れない。


「お待たせ」

「よくやったっ」

車から降り外で待っていた麻矢は、見ていたわけでもないのにそう言うと、後部席のドアを開け荷物を積み入れてくれた。
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