切なさに似て…
短くも長い冬の間に、降りしきった雪が路肩に追いやられ、僅かに塊が残る3月。

昼間の暖かい陽気とは比べものにならない程に、夕方にはすっかり冷え込んでいた。


寒ーいっ…。

19時過ぎちゃってるし…。だいぶ遅れちゃったな…。

あぁっ、にしても、…寒っ。珍しくスカートなんて履かなきゃ良かった、スースーする。

せっかく化粧直したってこの寒さじゃ、鼻真っ赤じゃないの…?


はぁーっ…。気が重いなぁ。

私は早くも、心の中で弱音を吐いた。



3月半ばだっていうのに夜はまだまだ寒い。

冷え性な体質なくせに滅多に履かないスカートに後悔しながらも、『待ってるよ』と1時間も前にメールを送って来た、私の到着を待ち侘びている“友達”の元へと急いだ。


会社から歩いて20分、看板に明かりが灯る、賑やかな飲み屋街を抜けた地下鉄駅の近く。

何処にでもあるチェーン店のファミレスの扉を開けると、気持ちとは裏腹にチリンチリンッと爽やかな鈴が音を奏でた。


「いらっしゃいませ、お客様は1名様でしょうか?」

営業スマイルを作りもしないで無表情のまま、お店のウェイトレスの女の人が来店した私を見てそう言った。


…そんなわけないじゃん。とは思うものの、口には出さず。

「いえ…、先に人が来て待ってるんで」

案内しようとしていた店員に告げる。
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