切なさに似て…
平日の金曜日ってこともあってか、店内の席は疎らに埋められていた。

ホールをキョロキョロ見回す私に気づいた友達が、「こっちだよー」と、恥ずかしげもなく腕を上げ大きく左右に振った。


そんな彼女の元へ駆け寄り、ジャケットを剥ぎ取り、申し訳なさそうな顔をして見せた。

「待ったよね?ごめんね」

「全然待ってないよー、遅かったね。カフェラテ2杯飲んじゃったよ。いやー、久しぶりだね柚ちゃん」

1ヶ月ぶりに顔を合わせた彼女は、満面の笑みを浮かべる。


カフェラテを2杯も飲み干し、1時間以上も私を待ち、“遅かったね”なんて言っておいて、“待ってないよ”と、答えるのはどういう心理?確実に待っていたと思うんだけど。

この子とは、もう1年以上付き合いがあるけれども、考えがさっぱりわからない。

彼女なりの気遣いなんだろうけど、もやーんとしてはっきりしない。

こういうところが、苦手なんだよね。


そういう私も、そんな無情なことを思っているとは言えないでいる。

言えないというか…、言う気にならないと言うか。


「何食べるー?ウチ、決まってるよ」

そう言う彼女の前には、広げられたままのメニューが置いてある。

「あぁ…。じゃあ、いつもの」

メニューを見ずに迷いもなく私がそう言うと、彼女は呼び出しボタンを押した。
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