切なさに似て…
「うん、こっから近いから余裕ー。信浩は余裕?」

助手席に腰を落ち着かせた私は、首を傾け信浩に目線を向ける。


「俺も余裕ー」

って、同じ様に信浩も顔を向け私の口調を真似た。


「キモいよ」

顔を顰めて信浩を見る。


「キモいとは何だよ?」

信浩も眉を歪ませ私を見た。


「信浩のお姉言葉、キモーいっ」

「キモーいっ、じゃないつーの」

「ぶっ。だから、真似しないでってば」

私と信浩は顔を見合わせ大笑いした。



信浩の運転する車は、ものの10分もかからず私の職場へと到着した。

「んじゃ、またな」

「じゃあね!ばーい」

「ばーい」

軽く右手を上げた伸浩に、片手を左右に振って、走り去って行く車を見送る。


こんな時でも、私は『送ってくれてありがとう』は言わない。


それが私たちだから。
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