切なさに似て…
「教えてもらってないっ」

今まで以上に出た大きな声は、部屋中に通る。


「は?治から全部聞いて来たんだろ?」

意味不明なことを言い出した信浩のほうが、驚いたような声を上げる。

「…全部、って?」

そう聞き返した私の眉はぴくぴくと動く。信浩同様に中心に寄った眉間の皺。


「…だから、番号とか。聞いて来たんだろ?」

あり得ないというような言い方は、わけがわからないとでも言っているみたいだ。


「聞いてないよ」

「じゃあ、何でここがわかったんだよ?」

「治から聞いたから」

「やっぱり聞いたんじゃねーかよ」

「だからっ。…私が聞いたのは住所だけだってば!あと、転勤したってことしか聞いてない」

つい声を張り上げていた。


さっきから同じことの繰り返しで、ちっとも話が前にも後ろにも進まなく苛立つ。


「治は柚果にも教えたって言ってたけどな。それにゴールデンウィークに来るんじゃなかったのかよ?」

「…教えてもらってない。だって、治も番号までは知らないって言ってたし。ゴールデンウィークにしょうと思ってたけど、取れなかったから、飛行機…」

「あのヤロっ…、騙しやがったな

さも悔しそうな表情を浮かべ、無意識なのか舌打ちを何度かしたあと、どうりで話が噛み合わねーわけだ。と、頭をガシガシ掻きだした。
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