切なさに似て…
ぎゅっとしっかり掴んだ腕が振りほどかれ、反対に腕を掴まれた。そのまま引き寄せられ、バランスを崩した私の体は信浩の両腕にすっぽりと包まれた。


「…ごめん。そうでもしないと気づいてくれないだろ?」

少し不満そうな低い声が頭の横で聞こえてくる。


「言葉で言えばいいのにっ…」

服の裾をきゅっと握りしめ、私も同じように不満そうな声を上げた。


「言えねーよ。…そんな簡単に言葉にできるくらいならとっくに言ってるつーの…。
友達なら友達のままでもいいと思ってた。柚果がそれでもいいなら…。だけど、やっぱダメだった…」

そう言うと、信浩の腕に力が加わりきつく身体が締まる。


友達のまま…。

そう思っていたのは私も一緒。


固く蓋をして想いをしまい込んだ。

何度それをこじ開けたくなったか、わからないくらい。

溢れ出そうになっていたのは確かだった。


友達でいれば…。

今のままでいい。


誰にも言えないでいたあの想いに、苦しんでいたのは。


私だけじゃなかったんだね…。
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