切なさに似て…
「何それ?先に彼女作ったの信浩じゃん。取っ替え引っ替えしてるくせに」

「はぁ?人をタラシみたいに言うな。柚果みたいに相手に本気になったことねーから」

「それって、本気になるのがいけないみたいじゃない?本気じゃないなら、弄んでたってこと?タラシって言われてもしょうがないよね。女をバカにした節操なし、サイテー。
何でもわかってる風なこと言っといてちっともわかってないんだから、本気になって何が悪いわけ?」

「俺のこと、高校の頃からずっと好きだったんじゃないのかよ?」

「そうだけど?」

「だったら、他の男に本気になるってどういうことだよ?それはずっと好きだったうちにはいねーよ」

こうなったら引く引かないだとか、折れる折れないとか関係ない。


私にだって譲れないものがあるんだ。

自分のしてきたことは間違いだったっていうのはわかる。

でも、その時は本気で信浩への想いが断ち切れると思っていたし。信浩以外の人を本気で好きになれたと、信じたかった。

でもそれは、まやかしだった。


「知らない信浩なんか、もう寝る!」

私はそう言うと立ち上がり、寝室らしきドアを開け暗闇に引き込まれるようにして部屋に入る。

ドアを少々乱暴に閉め、真っ暗な中手探りでベッドを捜し当てた。


我ながら、可愛げのない態度に、びっくりして感心すらしない。
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