切なさに似て…
額、瞼、鼻、頬、耳に落とされるキス。その度に吹きかかる息がくすぐったい。


「それで機嫌取ってるつもり?」

挑発とも取れるような台詞を投げつける。

「…どうされたい?」

宙に浮いた一弥の顔に手を伸ばし、頬に両手を沿える。

「そういうこと聞く?」

「俺、バカだから言われなきゃわかんない」

余裕たっぷりな声を出し、私の耳たぶを摘む。


「ふはっ…」

漏らした笑いのあと、口を動かした私の唇を強引に奪う一弥。


「今、言おうとしたのにっ…」

「待ってられない…」


降り注ぐ数え切れない程のキスの嵐に身を委ねる。


肌を擦り合い、寝て、起きて、食べて…。

土曜日の晩から繰り返し行われる情事の、タイムリミットは月曜日の朝まで。

「毎日一緒にいたい」

そう、甘え口調で言う一弥。


「土曜日だけの約束だよ」

「そうだけど…。前から不思議だったんだけど、なんで土日だけなの?」

「…1週間に1度くらいが調度いいでしょ?」

「燃えるから?」

「それに…。誰かにずっと傍にいられるの嫌いなんだよね。恋愛には不向きかも」

「そういうこと彼氏の前で言える柚が普通じゃないのか…、その柚に惚れた俺が普通じゃないのか?」

「どっちもじゃない?」

私はそう笑い飛ばし、ベッドから背中を起こし、下に目線を下ろした。
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