切なさに似て…
いつも、いつも。

何で夜中に連絡寄越すんだろ。普通、次の日仕事ある人は寝てるから。

とか思いながら、夜中だろうと信浩の部屋に押しかける私も、人のことは言えないんだっけ…。


もう1件のメール送信者の名前に、少しだけ眉を上げた。


3件のうち1件は珍しく、信浩からだった。

日付:3/15 19:34
件名:not title
本文:
明日来るなら鍋の材料
買って来て


携帯片手にその2行のメール本文にどう文句つけようかと、地下鉄を下り会社へと歩行する私は、口端を緩ませる。


来るなら買って来てって。行くの前提じゃん。

まぁ、行くんだけど…。それより、…何の鍋をしたいわけ?


わかりきっているのに、心の中で文句を並べ立てた。


信浩は薄味の鶏鍋が好きなんだよね。

白菜、長ネギに鶏モモと手羽元。これだけでいい。


結局、信浩にも返信せずに画面を閉じ、握り締めた携帯に付けられた揺れ動くチェーン。

何の飾り気のない、何の心も篭っていない普通のチェーンストラップは、所々鍍金が剥がれている。


そろそろ買い替えなきゃと思っていても、信浩とお揃いってだけで外せないでいる。
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