切なさに似て…
私の前で吊り革に捕まる、ダークグレーの背広を着たサラリーマン風の男の人が、ポケットから携帯を取り出し画面に明かりを点したかと思ったら、すぐに無造作にポケットへとしまい込んだ。

それに釣られて、私も手探りで鞄に押しやられたままの携帯電話をなんとか探し当て、片手でディスプレイを開き見た。

ほんの僅かにしか曲げられない腕にもどかしさを覚えながら、画面に映し出された文字。


[不在着信2件]

[メール受信3件]

着信は2件ともさっちゃんで、時間は昨日。いや、正確には今日の午前1時台。

不在 3/16 1:43
不在 3/16 1:44

こんな夜中に何の用だったのか?という疑問は、メールボックスを開いて理解した。


特に急ぎでも重要性もない内容で、あまりにも私には無関係と言わんばかりのメールを流し読み、そのまま画面を閉じた。

鞄の中に押し入れた携帯は、ストラップとぶつかり合いガチャッと音を発した。


2件のメールはさっちゃんから送信されたもので、着信のすぐあとに送られていた。


『明日暇!?彼氏の友達紹介したいから会えない!!?』

っていうのと。

『すごいいい人らしいよ!!彼氏が言うんだから間違いないよ!!会ってみた方がいいよ!!』

という内容。


…いい人かどうかは知らないけど。彼氏がいい人だと言うなら間違いないから会えって?

別にそんなの、頼んでないから。
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