君の右手
サッとその人から離れると
『しっかり前見とけよ』
仏頂面で言われた。
「えっ?前?」
そう言って前を見ると
一本の電柱…。
「ハハ…」
(あッあぶなー)
もうちょっとで電柱に突撃する所だったんだ。
お礼を言おうとして振り向くと
「あれっ?いない」
辺りを見渡すとさっきの人は、スタスタと歩いていっちゃってて遥か遠く。
「お礼言ってない、…てか!歩くの早ッ!?」
てか、綺麗な人だったなぁ…
男の子で、あんな綺麗な顔の人初めて見たよ。
そこらの女子よりは完璧綺麗だ。
それに、あんな吸い込まれそうな漆黒の瞳…
あれは、普通の女子だったら、即ノックアウトだな、
絶対モテモテだっ!
(くそ―、負けた!)
でも!
人のお礼を聞かずにサッサと歩いて行っちゃうなんて、絶対性格悪いに決まってるしッ!
うん、そーだそーだ!
「…ん?……」
そこで、重大な事に気づいた。
「!!学校〜!?」
そう叫んで、私はもう一度走り出した――