僕は彼女の事を二度愛していた
53
「はぁ・・・。」
また、パソコンの前で、恵は大きなため息をついた。
「はいはい。他に女がいたんでしょ?」
これ見よがしなため息だ。みなまで言われなくても、絵里香はわかっていた。
「たぶん、そう・・・。って言うか、なんでわかるの?」
「えっ、なんでわからないのよ?」
「あんたね、大河内さんの事ちゃんと見てた?」
「そんなの当たり前じゃない。毎日、毎日、ずっと見てたよ。」
「なのに気がつかなかったんだ。恋は盲目とは、よく言ったもんだね・・・。」
「?」
「だって、急に格好良くなってきたでしょ、大河内さん。あれは恋してるからだって、少し前から思ってたもん。」
「・・・。いつも格好良いから気づかなかった・・・。」
絵里香は、笑いを堪える事が出来なかった。
何人かの社員が、何事かと絵里香の事を見ている。
「やばっ。」
「なんで笑うのよ?」
「あんたが、すごい台詞を真顔で言うからでしょ。よほど、大河内さんが好きなんだね。」
「当たり前でしょ。私が、世界で一番、先輩の事好きなんだよ。」
絵里香は、また吹き出しそうになったが、今度はなんとか堪えた。
「そこまで言い切るならさ、別に彼女がいてもきにしなくていいんじゃない?結婚してたらマズいだろうけどさ、別に付き合ってるだけならアリでしょ。」
今まで、どれだけ絵里香に励まされてきたかわからない。でも、今の言葉はそのどれよりも、恵を勇気づけてくれた。
さっき大河内に言った言葉も忘れ、再び気持ちを全開にした。
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