僕は彼女の事を二度愛していた
それは突然だった。さっきまでの景色が、自分の意志とは無関係に変化していた。
「ここはどこ?」
周りを見ても、雲に隠れて何も見えない。ただ、やさしい声が、どこからか聞こえてくる。
「望、望。」
聞き覚えのある声だ。懐かしくて涙が浮かんでくる。
「お、おばあちゃん?おばあちゃん、どこにいるの?」
「お前の目の前にいるよ。」
その声と同時に、望の祖母は姿を現した。
「おばあちゃん・・・。また、おばあちゃんに逢えるなんて・・・。嘘でしょ?」
「嘘でない。私はここにいるよ。わかるね?」
「ホントだ。この手、おばあちゃんの手だ。」
涙が止まらない。握った手は、間違いなく祖母のものだ。望は戻っていた。心も、体も子供の頃に、祖母がやさしく子守歌を歌ってくれたあの頃に戻っていた。
祖母の温もりに、すべてを忘れてしまいそうだった。
< 258 / 264 >

この作品をシェア

pagetop