勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
襖を閉めて出て行く左近。
優美に襖を閉める左近に少々の苛立ちを感じた。
が、優美だったのはそこまでだった。
遠のく足音が段々に駆け足になっていく。
左近が廊下を走っている。
その行動が左近の気持ちを表すようで俺はおかしくなった。
冷静で何事にも動じない左近。
浮き足立つ姿など見たことがない。
「それほどに夢中にさせる娘とはどのような娘なのだ。」
紫衣でなくとも左近を夢中にさせる娘なら逢っても良いななどと考えた。
穏やかな気持ちで俺は座っていた。
川原で過ごした時間と同じように時が優しく包み込むようだ。
「紫衣、もう一度お前に逢いたい。」
何度も口にした言葉を最後だと決めて口にした。
優しい気持ちにしてくれる紫衣、側にいなくとも俺は紫衣を思い出すだけであたたかい気持ちになれるんだ。