勝利の女神になりたいのッ!~第1部~



「どうしたというのだ」

立ち上がった彼は私をフワリと抱きしめた。


背中から感じる彼のぬくもり


首筋に触れる彼の唇



こんな時でもギュッと胸を締め付ける。



好きすぎて、もうどうしようもない。



「俺を見ろ。」



肩を掴まれ体の向きを変えられると飛び込んでくるのは酷く不機嫌そうな彼の顔。



オドオドと瞳を泳がせる私に彼はもう一度自分を見るようにと声を掛けた。



「どうして泣く?」



優しくかけられる彼の言葉。



さっきまで不機嫌な表情はなくなり、だけど曇っている。



「なぜ謝るのですか?」


「それは…紫衣に無理をさせたのではないかと思ったのだ。」



そして彼は布団を指差した。


彼の指す場所に視線を移すと目に飛び込んでくるのは紅。


ハジメテノシルシ


「初めてだったのだろう?」


「はい…。」


問われる事が恥ずかしい…


私は俯いて自分の膝元をジッと見つめた。


「嬉しかった。」


言葉と同時に私の体は彼の腕の中に閉じこめられた。


「知らなかったとはいえ無理をさせてすまなかった。」


「いえ、無理なんてしてません。」



彼が謝ったのは私の体を気遣うためだとわかって嬉しかった。


不安も悲しみも一気に吹き飛んだんだ。



ポロポロと零れ落ちる涙を拭いながら彼は不安そうに私に尋ねた。



「なぜ泣く?どこかつらいのか?」


「いいえ、幸せすぎて涙が出るのです。」



そう、私はとても幸せだ。


ずっと憧れていた、会う事も出来ない人の側で生きている。


その人を一瞬で好きになって、その想いまで叶った。


幸せすぎて怖いのだ。




「三成様....私はあなたの側でずっと生きていきたい...。」





彼には直接言えない言葉。


その言葉を心の中でソッと呟いた。
























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