勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
最初に目に飛び込んできたのは囲炉裏だった。
私は囲炉裏の横に敷かれた布団に寝かされていたんだ。
「目が覚めたか?」
囲炉裏の側に座る男が私に声をかけた。
ずっと周りを見渡している私の側に来ると男は私を抱き上げて囲炉裏の側に連れてきた。
「お前話せないのか?」
男の質問に私は首を横に振って答えた。
「話せるのなら何か話せ。」
イライラとした様子の男に私は慌てて口を開いた。
「紫衣...。」
名前を言うだけで精一杯。
私はいったいどうしてここにいるのか
ここはいったいどこなのか
考えても全くわからない
それどころかまるで知らない世界に来たような気分だ。
ほったて小屋のような粗末な家。
目の前の男の姿も着物だし
なにより髪型が...
なんていうか...
まるで時代劇の撮影現場にでも迷い込んだかのような世界。
どうしてだろう?
そんなことばかり考えていてまともに話せなかった。