勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
男の姿に、周りの風景に困惑する私の頭の中で声がする。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんを助けて...。」
あの小さな女の子に頼まれた言葉。
お兄ちゃんがいったい誰なのかわからないまま私は少女と約束を交わしたんだ。
お兄ちゃんというのは今私を見て訝しげな顔をしている目の前の男の人のことなの?
「紫衣って隣の村の紫衣か?
いや...隣村の紫衣はもっと小さな子供だし...。」
私の名前を聞いてその男はブツブツと呟きを漏らしていた。
隣村の小さな女の子。
もしかしてあの少女のことかもしれない。
そう思った私は男に村に連れて行ってほしいと頼んだ。
その男は急に話しかけた私をギョッとした顔で見た後コクリと頷いてくれたんだ。
その夜は男は親切に私を介抱してくれた。
見知らぬ男の家に止めてもらうのは正直怖いと思いながらも体が動かなかったんだ。
時間がたつにつれ痺れるような感覚に襲われて寝返りをうつことさえ困難な状態になっていった。
男はとても親切に体を起こすことも出来ない私に何度も白湯を飲ませてくれた。
そんな親切な男に私の口も徐々に軽くなっていった。