勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
本当は気持ちのいい話じゃないよ。
三成を利用することだけ考えて彼に嫁いで来た人の名前を名乗るなんてイヤだ。
だけど...
だけどそんなの言えないよ。
それに紅葉さんが今まで守ってきたものを私が崩しちゃうなんて出来ないよね?
ずっと女の振りをしてきた紅葉さん。
それは三成を守るためなんでしょう?
だから私はうたでいい。
名前名乗るなんてどうってことない。
彼の側で彼を支えていける妻になりたい。
そう思って大阪に出てきたんだ。
この世界で彼と一緒に生きるって決めたんだ。
だから...。
「お前本当にいいのか?」
笑顔のまま頭の中で考えを巡らせていた私に心配そうな紅葉さんの声。
「大丈夫だよ。」
「大丈夫って返すことが本意ではないと証明しているようなものだ。」
さすが紅葉さん。
心を見透かしているような言葉をかけてくる。
「いいの。もう決めたから!!私が役に立つことなんて何もないんだもの役割が出来てとってもスッキリした気分だよ。」
「役割か...。」
「あっ、だからって彼の側にいることまで役割だなんて思ってないよ、誤解しないでね。」
「わかった、もう俺も何も聞かない。
紫衣、お前少しは成長してるんだな。
いつもウジウジした弱い紫衣がスッキリしてるじゃないか。」
初めてかな?
紅葉さんが私を感心したような言葉をかけるのは...。
なんだかくすぐったい。
「本当に成長できてるんならきっとそれは朱里さんや紅葉さんのおかげだよ。」
そうだよ。
いつもメソメソ、グズグズ考えていても何も変わらないって二人を見てると感じたんだもの。
前向きな二人の生き方が私の生き方のこれからもお手本になるんだからね?
「これからもずっと朱里さんと紅葉さんと一緒にいたい。よろしくね紅葉さん!
」
「俺は勘弁して欲しいよ...。」
二人で目と目を合わせて笑いあったんだ。