勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「なんて声出してるんだい?」
驚いた様子の朱里さん。
「阿呆だ...。」
溜息まじりの紅葉さんの呟く声。
そして三成の腕の中から強引に逃れて振り返った私に左近さんのニヤニヤとした笑顔が瞳に飛び込んできた。
「左近、謀ったな。」
厳しい三成の声。
それでも左近さんは動じることなく言葉を返す。
「謀ったなどと人聞きの悪い。殿と紫衣の為にしたことでございます。」
「今日はゆるりと屋敷で過ごす予定だった。」
「存じております。」
「ならば!!」
「されど!必要なのです。」
二人の攻防戦は結局左近さんの押切りで決着がついた。
黙り込む三成を朱里さんと紅葉さんも満足そうに見ていた。
三成は彼らにとって主にあたる人。
でも彼らの主従関係はとても変わっている。
諦めたようにため息を落とす三成にそっと手を伸ばせば薄く笑った表情を浮かべながら私に視線を合わせてくれた。
「それでは後ほど。」
三成と私の分の朝の膳を二つ置いて三人は部屋から出て行った。
「頂きましょうか。」