勝利の女神になりたいのッ!~第1部~


「わかっていたのか?」

少し焦ったような彼の声。
同時に紅葉さんの溜め息も聞こえた。


「ふふ…」


余裕の笑みを零す私を彼は更にギュッと抱きしめる。


つまんねぇなって紅葉さんの呟きは聞かなかったことにしてあげるかわりに彼の腕の中のぬくもりを堪能した。


うっとりと彼のぬくもりに包まれていると朱里さんはハッとした様子で甘い空気をかき消すように着付けをしてくれた人達を退出させてから私と三成に向かって声を掛けてきた。


「そろそろ、よろしいのでは?」


その言葉を聞いて紅葉さんも便乗するように言ったんだ。


「殿はもう自分の仕事に戻って下さい。
今から紫衣は左近様と対面するんですから。」


忙しいんだから手間を取らせないで下さいよって悔しそうな紅葉さんの口調に彼と二人、目を合わせて小さく笑うと彼は私の耳元に唇をよせて小さく囁くと部屋を退出した。


「綺麗だ」


彼の吐息と甘い言葉にスッカリ酔わされた私は自分があんみつ姫だと言うことも忘れて照れるしかなかった。




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